■ 建物の由来

    鎌 倉文学館は、加賀百万石の藩主で知られた、旧前田侯爵家の鎌倉別邸でした。この別邸は、第15代当主前田利嗣氏が、明治23年頃に土地を入手して建てたの が始まりで、現在の建物は、第16代当主利為氏が、昭和11年に洋風に全面改築したもので、設計者は渡辺栄治氏、工事施工は竹中工務店でした。
 建築用材は塩害に強いチーク材を使用、室内のステンドグラスや照明器具なども粋をこらしています。
 明治時代には、当時皇太子であった大正天皇ほか皇族の人々が来遊しており、戦後にはデンマーク公使が別荘に借用し、昭和39年からは佐藤栄作元首相が借りて、亡くなる前まで週末の静養地としていました。
 作家の三島由紀夫氏が作品「春の雪」の中の別荘のモデルとして描いていることでも知られ、また、利為氏の長女酒井美意子氏は著書「ある華族の昭和史」のなかで、別邸のようすを記しています。
 昭和58年に本館建物が第17代当主利建氏から鎌倉市に寄贈されたので、外観をそのまま残しながら内部を補修し、別棟に収蔵庫を新築して、昭和60年10月31日開館し、11月1日より一般公開しました。 
建物の外観 玄関手前から建物を望む
館内から庭園を望む



   平成12年3月、鎌倉文学館が国の登録有形文化財に決まりました。建物はハーフテインバーとスパニッシュを基調とし、半六角形の張り出し窓・半円形欄間の 飾り窓・パラペットの装飾・ベランダの手摺等洋風のデザインを導入している一方、切妻屋根と深い軒の出等和風デザインも見られ独特の特徴的な外観を呈して います。内部はアールデコの様式が随所に見られ、建築用材は塩害に強いチーク材を使用しています。また、大理石を使用した玄関や暖炉、床のモザイク模様の 寄木貼り、飾り窓の装飾、ステンドグラスや照明器具などもこの建物の重厚さを伝える要素となっています。近代の鎌倉に数多く建てられた別荘建築の中でも、 規模が大きく、保養所・別荘地として発展した明治から昭和の初めにかけての鎌倉を偲ぶ貴重な遺産の一つとなっています。

MENUに戻る